Boku Wa Undō Onchi
へ**ち
主人公と別れがたく、ページをめくる手が止まりそうな傑作青春小説
普段はレビューを書いたり、書こうと思ったりはしないのですが、堪らず投稿しました。電車で隣りに座った女性が枡野さんの『ショートソング』を読んでいたのです。『ショートソング』は刊行直後に読んでいました。「ちょっと変わった面白い本」程度の感想でしたが、何となく久しぶりに読み返し、更に他の枡野作品も読みたくなって、kindle版の『僕は運動おんち』を購入し、読み始めたワケです。どこかで短歌が絡むのかなという予想は外れ、正統派の青春小説でした。いや~、面白い!自殺願望のある高校生のひとり語りとなれば、暗く重苦しく鬱陶しくなってしまうところをさらりとかわし、文体は軽妙で平易。男子高校生の葛藤と成長のひと夏が描かれます。高校生なんて、多かれ少なかれ、多感で不安の中、悶々と毎日を過ごしたりするもの。1985年の時代に物語を置いたこととそれを男子高校生の視点で描くことで、同世代を生きた私には懐かしく、どこか可笑しく、眩しく響きました。この物語で最も着目すべきところは本文で語られないことにあります。例えば、僕と家族の慈愛に満ちた関係、妹とカズミさんの間で交わされたであろうやりとり、イツキの意中の相手が誰か、一筋縄ではいかない高梨くん、そして主人公自身についても。肝心で大切なことは語られないのです。それは登場人物の一人の台詞にも、こう現れています。「すぐに答えを知ろうとしちゃだめ。長い時間をかけないと、気づけないことがいっぱいあるの。(中略) 一生かかってわかることもあるのかも」このレビューを読んで、たった一人でも、この本を読んでみようという方が出てくれれば、嬉しいです
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1 month ago
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